ダドリー夫妻の朝と夜
「エミリア、本当にどこも悪くないのだね?」

「ええ、アーサー様」

「わたしに合わせて、早くに朝食を摂ることはないのだよ」

「いいえ、アーサー様。無理などしていませんわ」

「それならせめて、もう少し楽な格好をしてくれば良い。この家には、わたししかいないのだから、髪など結わなくても構わない」

「そんな見苦しいもの、アーサー様にお見せするわけにはまいりませんわ」
「構わないと言った」

「……はい、アーサー様」

 翌日からエミリアは、下ろし髪のままアーサーの前に現れるようになった。

 眼鏡をしないアーサーには、妻の瞳が今朝はどんな葉の色をしているのかわからない。

 けれど、彼女の歩く後には、今朝もストロベリー・ブロンドが春を祝福するように、ふわふわと舞っている。



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