ダドリー夫妻の朝と夜
そんなわけだったからエミリアは、夫とどう顔を合わせれば良いのかわからなかった。
もっとも次に会うのは明朝の朝食室だ。いざとなれば、気分が悪いとでも言って、朝食の時間をずらせばいい。実際、あれからドキドキしすぎて、ろくに食べられやしない。
それでも夫の動向が気になるのはいかんともしがたく、いつもの夜と同じようにドア越しに聞き耳を立て、夫がこの部屋を通り過ぎるのを待っている。
エミリアとしては出迎えたかったのだが、「奥様が夜遅くまでお待ちになっていらっしゃると思うと、旦那様はお仕事に集中できないようでございます」と家令に早々に釘を刺されていたため、やむなくこんな真似をしている。
“旦那様が夜遅くまでお仕事なさっていると思うと、ゆっくり眠ることもできない奥様”がここにいるということは、執事や侍女はもちろん知っている。家令だけが知らないということはないだろうから、黙認しているのだろう。
階段が、規則正しく軋む。アーサーが上って来たのだ。
しかし、いつもなら聞こえる家令とのやり取りが聞こえない。今日はもう話すことがないのだろうか。
微かな足音は、着実に近づいてくる。
珍しく一人なのかと耳を澄ませたところで、その足音が止まった──ような気がした。
──ッ!!
もっとも次に会うのは明朝の朝食室だ。いざとなれば、気分が悪いとでも言って、朝食の時間をずらせばいい。実際、あれからドキドキしすぎて、ろくに食べられやしない。
それでも夫の動向が気になるのはいかんともしがたく、いつもの夜と同じようにドア越しに聞き耳を立て、夫がこの部屋を通り過ぎるのを待っている。
エミリアとしては出迎えたかったのだが、「奥様が夜遅くまでお待ちになっていらっしゃると思うと、旦那様はお仕事に集中できないようでございます」と家令に早々に釘を刺されていたため、やむなくこんな真似をしている。
“旦那様が夜遅くまでお仕事なさっていると思うと、ゆっくり眠ることもできない奥様”がここにいるということは、執事や侍女はもちろん知っている。家令だけが知らないということはないだろうから、黙認しているのだろう。
階段が、規則正しく軋む。アーサーが上って来たのだ。
しかし、いつもなら聞こえる家令とのやり取りが聞こえない。今日はもう話すことがないのだろうか。
微かな足音は、着実に近づいてくる。
珍しく一人なのかと耳を澄ませたところで、その足音が止まった──ような気がした。
──ッ!!