ライアー
今日も恋愛相談とか取ってつけたような悩みを持ち出して何とか呼び出したのだ。

「なに、またあの上司か?」

「上司じゃないって、取引先の東さん」

「西だか、東だか知らねーがいつもの無鉄砲さで告白するなり、アタックするなりしたらいいだろ?」


東さんのことなんて1ミリも好きじゃない。侑を呼び出すための嘘によって、私は恋多き女になっている。


人間そんなポンポン恋愛できるわけなんてないのに、それに気づかない侑は馬鹿だ。



もう、2、3回東さんの話題で呼び出してるからさすがに厳しいかと思ったけど、まだまだ大丈夫そう。



「もう、ダメかも知れない。最近入って来た若い子からも人気なの、彼。この前、仕事終わり、私よりずっと若くて可愛い子の腰を抱くようにして、レストランに入ってたの見ちゃったわ。」


最大限の辛そうな顔で白々しい嘘を吐く。罪悪感を感じなくなったのはいつからだっただろう。

確かに東さんが若い子と食事行ったのを見たのは本当だけど。よくやるなって思っただけ。



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