見つめていたい

「ひャッ!!・・・」


柚木くんの顔を見た瞬間、呼吸が止まってしまった。


何故ならそこにいたのは、3年間片想いをしていた人


渡部一真くんだったのだ。


私は憧れの渡部くんを前に、急に顔が熱くなり、下を向いてしまった。


柚木くんが渡部くんで、渡部くんが柚木くんで!??

???

双子?

・・・

突然の彼の出現に気が動転してしまっていた。

そしてまた、貧血に襲われて倒れそうに!

「愛原さん!!!」
「愛原!!」

すかさず柚木くんが私の身体を支えてくれた。

「だ、大丈夫…少し休めば治るから…」

「あたし、保健室の先生のところに行ってくる!柚木くん、愛原さんをお願い!」

「…片平さん ? 私…大丈夫だから…」

立ち上がろうとすると、私の頭の上のほうから囁きが聞こえる


「素直になれよ」


柚木くん…


すると彼は突然かがみ込んだ

「乗れよ」

……素直にって、渡部くんに言われた
柚木くんじゃなくて、渡部くんに乗れよって…

素直に…

気がついたら、自然に柚木くんの背中に乗っていた。

柚木くんの背中、違う…

渡部くんの背中に私が乗っている。

彼の腕に支えられて、胸が熱くなるくらいの渡部くんの温かい背中に顔をうずめて…

すぐ前には茶色の髪、うっすらとシャンプーのいい匂いがする。


まるで夢を見ているよう

< 10 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop