見つめていたい


お姫様騒動から数日が過ぎた。


その後柚木くんとは言葉を交わしていない
けれど、近くにいるだけで安心する。

好きな人と同じ学校に通え、好きな人と同じクラスで勉強ができて、毎日、好きな人の顔が見られるのだから


今日もまた、窓側を眺めていると、木々の緑があふれる太陽の光を反射させて、キャンバスの中に、彼のシルエットを映しだしていた。


風にたなびく葉が、囁きかけるようにふわぁっと、キャンバスからシルエットを呼び出す。


そして私は、彼の目線を感じて、目を逸らしてしまった。

え?…今、柚木くんが私を見た?


間違えかもしれない、けれど、ほんの一瞬だけ

彼のブラウンの輝く瞳が、私に優しく話しかけているように思えた。

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