見つめていたい


「ねえ朱音、みんなで何処へ行くの」

「それは、着いてからのお楽しみ!」

朱音ったら、なんかにやけてる…

終点の駅で降り、少し街はずれまで歩いてくると、小さなお城のような建物の前で、恵美が止まった。

「歌うぞー!」

…カラオケ…


「あたしから!ABBいきまーーす!」

恵美が最初に歌い始めた。

「こいする~♪…♪…」

『ふぅーッ!イェーッイ!」

「じゃあ次は、みんなでティーチャー歌いましょう!」

美沙ちゃんもABBが大好きなのだ

『ティーチャーつ!…♪・♪…ジャジャンジャジャン!!ポロン♪』

「みなさ~ん!ありがとうございましたぁ~!…なんてねッ」

「あはははッ、似てるぅ、本物みたい」

ABBの高須ちゃんかぁ、似てるぅ

「美沙ちゃん似てる~!あははは、あ~楽しかった!…私、ちょっと…」

ちょっとジュース飲み過ぎたみたい…


御手洗いに行こうとしたら、隣の部屋の扉が開いて、突然、白のワイシャツにネクタイ姿の男性が出てきた。


「愛原?…」

「流星くん…」


同じクラスのプチャキの瀧澤流星(たきざわりゅうせい)くんとバッタリ、はち合わせに!



「へぇ意外、愛原もこうゆうとこへ来るんだ」

「う、うん…まぁ」

「まさか、一人じゃ?」

「それはないよ、朱音達と…」

「隣の部屋か、恵美ならたぶん…ちょっと交渉してくるわ」

流星くんは私達の部屋の中に入って行ってしまった。



御手洗いから戻ってみると

テレビの前で流星くんと恵美が手を繋いで、楽しそうにふたりでひとつのマイクを持って歌っていた。

どうなっているの、あのふたり…


!!!…うそ!!柚木くんがいる。

紗穂、美沙、朱音の3人は柚木くんと、楽しそうにお喋りをしていた。

「くるみ!はやくおいでよーッ」

私も彼の見える隅っこの席に座り仲間入り、柚木くんも私に気づいてチラッと見てくれた。私はそれに応えるかのように、小さくお辞儀をした。

まさかこんなところで会えるとは、思ってもいなかったので嬉しい!

みんなの話もほとんど聞かず、時間が経つのも忘れて、彼を見つめていた。



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