見つめていたい
……そうなんだ、柚木くんも東京に住んでいたんだ…じゃあ胡桃と一緒だね…ねえ胡桃?…
美沙ちゃんに肩をツンツンされ、ようやく気がついた。
「あ…朱音?ごめん…えと、なんだっけ?」
「なに?ぼぅっとして、調子悪いわけじゃないよね?」
「それはない、大丈夫!ごめん…」
彼に見とれていたあまり…つい…柚木くんの笑顔を見ていたら、私もなんか幸せな気持ちになってしまったから
柚木くん…
カラオケは恵美と流星くんのふたりで貸し切り状態になっている。
しかし、柚木くんとのお喋りが夢中で、ふたりのカラオケは誰も聞いていない。
「そーなんだ…鷹松…」
紗穂と美沙ちゃんがごそごそと、何やらふたりで相談しはじめた。
紗穂ちゃんが聞いてよ~なんかそーゆーの得意そうだし
ダメダメダメ!こればかりは…ムリ…
「ねえ、どうしたの?」
真相を聞くの、柚木くんの彼女の件!紗穂ちゃんに聞いてって言ったのに、恥ずかしくて聞けないからっていうの…胡桃ちゃん?お願い!わたしも無理だから、ね、聞いて…
「えー…な、なんで私?」
さっき聞いたよ、東京の時、同じ中学だったってこと…柚木くん愛原さんのこと、知っていたみたいだし…
!?…知っていた?…
だからお願い!
…迷ったあげく聞いてみることにした、私も柚木くんのこと、なんでも知りたいし、あれからお話していないし、それに、いつかは知る日が来るのだから…
「じゃあ、私、聞いてみるよ」
「そうこなくちゃ、さすが!くるみちゃん!」
私は決意して、ゆっくり席を立つと彼の横に行き話しかけた。
「あの!」
「胡桃?どうしたの?突然…」
「朱音ごめんね、ちょっと柚木くんに…」
「あ、うん…」
「あの!」
「…」
やっぱり、柚木くんを見てしまうと、話せなくなる。
見なければいいんだ…
私はカラオケのテレビのほうをみながら柚木くんに、話はじめた。
「あの!……柚木くん?」
「?なに?」
「えと…聞きたいことが…」
「そういえば、この前も確か、話したいことがあるって…言ってたよな…」
「…柚木くんて…彼女はいるの?」
「…いない……いたら、流星なんかと、カラオケなんて来ないし…」
『やったーッ!』朱音達から歓喜の声
「いない?…」
「ああ…でも……好きな人はいる…
聞きたいことの返事…これで、いい?」
「ショック~」朱音達から落胆の声
好きな…ひと…がいるんだ…
「うん…ありがとう…」
・・