見つめていたい
柚木くんが本当のことを教えてくれた。
好きな人がいるって聞いた時、いったいどんな人だろうか?そう思った。
きっと、彼が好きになった人だから、とても美しい人なんだろうなって
なぜだろう、ジェラシーとか、そういう気持ちはまったくない
彼が私の質問に、真剣に答えてくれた
そのことの方が心に残っている
好きな人がいる、そう聞いて変わったことは
柚木くんに好きな人が出来たことを知ったこと
そして、変わらないことは
柚木くんのことが好きなこと
ただそれだけ
相変わらず歌っている恵美と流星くん
朱音達とまた、お喋りが始まった。
みんなの楽しそうな笑顔を見ていると、私も笑顔に変わっていく
もちろん、柚木くんの笑顔がいちばん輝いて見えるんだ!
「あ~スッキリ、喉が痛いし…流星のせいだ!」
「人のせいにすんなよ、恵美だろ?次から次に予約しまくるから…」
「それよりさ、なんか食べたい!おなかぺこぺこ!」
「何だよ急に…じゃあさ、みんなでメシ食いに行こう!」
「賛成!」
みんなで近くのファミレスに行くことに、しかし、東京行きの最終電車がギリギリ…私ひとりだけ、帰ることになった。
「まったあした〜バイバイ!」
「胡桃!バイバイ!」
「胡桃ちゃん、今日はありがと!バイば~い」
「胡桃!楽しかったぜぃ!」
「胡桃、バイバイね~」
「また明日な!」
「じゃ…」
駅に向かう私を、朱音、美沙ちゃん、恵美、流星くん、紗穂…柚木くん、みんなが手を振って、見送ってくれた。
楽しかった余韻の残る、ひとり帰り道、春の夜空を見上げると、雲が薄っすらとかかった、ま~るいお月様が見える。
…今の私みたい…
人影のない改札口を抜けて、私はホームのベンチに座り電車を待っていた。