見つめていたい
「きょうは…早く帰るのよ!」
門限7時って…厳し過ぎませんか?
ーーーー
東ヶ丘の駅に着くと…
あ~あ…今日もまた最終のバス、中に乗り込むと、またまた男子だらけだ。
唯一いやな時間帯…はぁ、早くくればよかっ…!?
そう思いながら、いちばん後ろの席を見ると…!!!
「柚木くん!!!」…アッ…思わず、大きな声を出してしまった。
…男子達の目線が私に集中…
それを見た柚木くんは、私を見て笑っていた。
…よくなったんだ…風邪、治ったんだね、よかった…
「愛原!ここ…」
柚木くんの隣?…
「ありがとう…あの、熱は?」
「大丈夫…おかゆのおかげで…」
「…食べてくれたの?…」
「ああ、美味かったぜ」
「…風邪、治ってよかったね…」
「…」…
一瞬何かを言おうして、噤んでしまった柚木くん…
「…また、熱が出てきたかも…」
「…え?…」
『プ シュー』
学校前に到着した
柚木くんと私はバスを最後に降りると、ゆっくり歩きだした。
バス停から坂道を上がって数分間が過ぎた。
木洩れ陽と共に、今日も小鳥の可愛らしいさえずりがこだましている、いつもの小さな木々のトンネルをくぐり抜けると、太陽の光がスポットライトのように私達に降り注いだ。
柚木くんはそこで立ち止まった。
「?柚木くん、どうしたの?」
「愛原、ごめん…」
「え?…どうしたの、柚木くん」
柚木くんは振り返って、私の目を見ながら
「もう、俺のことは、考えなくてもいいよ」
そう言って、遠くを見つめている。
…それって…そうだよね…
柚木くんには、好きな人がいるんだから…
私が…私がいたら…
迷惑…
「…私がいたら迷惑だよね…」
「違う!…」
柚木くん?
…?…え…?…
「長い間、待たせてごめんな」
「え?…」
すると、柚木くんは私に近づき、私の手を握りしめた。
あ…
「もう、なにも考えなくてもいい…
ずっと、そばにいるから…
愛原のそばに、ずっと一緒にいるから…」
「柚木くん…」
「あの時、愛原に告白されるまで…
わからなかった…
まさか、鷹松の頃から俺のことを思っていてくれてたなんて…」
柚木くんに握られていた手が離れた。
「じつはさ、俺も、中1の夏くらいから愛原のことが気になって、東ヶ丘に引っ越す前に、告白しようか迷っていたんだ…」
……
「あっ…あの…柚木くんの好きな…人って?」
「愛原……くるみだよ!」
「……。…。」
…うれし涙が止まらない
いっぱい、いっぱい、今までのことを話したいのに
言葉に現すことができないよ
この嬉しい気持ちを、全部受け止めて欲しい!
柚木くんの胸に
思いきり飛び込んだ!