見つめていたい
しっかりと結ばれた手と手、柚木くんの温かいぬくもりを感じている。
ずっとこのまま、柚木くんと手を繋いでいたい。
しかし、それもほんの束の間の幸せ
ふたりだけの夢の世界から、現実の扉の前に来てしまった…
名残惜しいかのように、結ばれた手と手がゆっくり解けてゆくと、最後に小指と小指が悲しそうに離れる。
「…くるみ…」
「…柚木くん…」
お互い目を合わせて微笑むと、扉を開け、いつもと同じように教室へ入った。
「おはよー」
「あーッ!きた!おはよう!!」
朱音に恵美たち、それに流星くんが集まってきた。
「胡桃に…柚木くん?」
「あれ?カズマ?大丈夫なのかよ」
「あ、ああ、なんとか」
「でも、まだ顔が赤い気がする、うつすなよ」
「 大丈夫だって!…」
「そういえば、胡桃も顔が赤いんじゃない?」
「…そ、そう?…」
「ギリで、走って来たからだろ?」
「そうなの、間一髪ってところ?間に合って良かった…」
みんなに知られないよう、普通に席に着くことができた。
顔が赤かったのは、柚木くんとつながってたから?…
柚木くんはやっぱり風邪がまだ?…心配…
ううん違う、私と一緒、だったらちょっと可愛いところ見ちゃったかな…