見つめていたい


「けど彼…柚木くんて、クールだけれど、優しいわね」

柚木?…

「ベッドへ寝かせたあなたのことを、何も言わず、ただずっと見守っていたのよ」


私…見られてた…



『コンコン!』


シーンとした保健室に、小さなノックの音が響く


『失礼します』


カーテン越しに、聞き覚えのある男性の声が聞こえてきた。


「どうぞ……

柚木くん!?…どうしたの?…そっか、愛原さんに、会いにきてくれたのね?…」

柚木くん…

「違います…佐藤先生からこのプリントを、理恵先生にって…」

「え?…あ…それは、ありがとう」

「じゃあ…失礼します…」

「ちょっと待って!愛原さん気がついたの、もう大丈夫だから…少しこっちで…」

「いや…それじゃ…」

『シャーーーッ!』

ベッドから飛び出して、私はカーテンを思い切って開けた

保健室のドアノブに手をかけている、うしろ姿の柚木くんが見えた。

「あ、あの!ゆずきくん?…あの、さっきはごめんなさい、おかげでもう大丈夫、だから…あの、ありがとう」

柚木くんは振り向きもせずに、ドアを開けながら

「ああ…」

と、言い残して彼は出て行ってしまった。
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