見つめていたい

「くるみ…」


あんなに長く感じた夏休みは初めてで、後半はバイトに打ち込んでいたから、かえって良かったのかもしれない、けれど、…日に日にくるみのことが気になってゆく自分が、どうしたらいいかわからなくなっていたんだ。



ふと、くるみを見ると、話を聞きながら、控えめに俺のジャケットの袖をつまんでいる彼女の小さな指を見て…ちょっといじらしくて、ひとつひとつの仕草が、すべて可愛くて…



夏休みも終わり、始業式の日がやってきた。

しゅん、と廊下で話をしていたら、後ろから誰かに肩を叩かれたんだ。

「かずまくん!おはよう!」

「うっす…!?ど、どうしたんだよ…おまえ、カノン?」

花火大会の時とは全く違うカノンがそこにいた。

スッピンでふたつに結んだ彼女は、花火大会の時の、それとはまったく違い、面影すら無かった。

「いきなり清楚っぽくなっちゃって…けど、マじいいじゃない似合ってるぜ!」

「あんたはいいの!…それより…かずまくんは? どう思う?」

「あ、まぁ…前よりは……!?」

カノンと話している時だった、廊下の向こうからふたり組の女子生徒が、話しながらやってくるのが見えたんだ。

その、片方の子に引き寄せられるように、目が向いた…背が低くて髪をふたつに結んでいて、何か楽しい話でもしていたのか、その初めて見る彼女の笑顔に吸い込まれそうになった…

俺達の近くまでくると、彼女は何故か笑うのをやめて下を向いてしまった。

…しかし…そのあと…一瞬、俺と目が合った。

けど、彼女はすぐに目をそらしてしまい、俺の前から急ぎ足で行ってしまった。

ようやく彼女に会えたと思ったのに…

彼女のことをしばらく目で追っていた。

すると彼女は3組の教室の前で立ち止まり、また、こっちを見た、しかし目をそらして中に行ってしまった。
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