見つめていたい

私はそのことを、愛菜に打ち明けた。


「愛菜…私…」

「好きになっちゃったんだ…」


たしかに彼はスタイルもいいし、背も高くカッコいい

けど、私は、あの神秘的で優しそうな彼の目…

吸い込まれそうな、その澄んだ瞳の虜になってしまったらしい。


その想いは変わらぬままにバレンタインを迎える。

彼に想いを伝える絶好の機会だった。

初めてチョコレートを作ったものの、四六時中、渡部くんの側に富永さんがいるし、私には勇気が無かった。


放課後ーーー


「胡桃、早く行かないと、渡部くん行っちゃうよ」

「だって、富永さんとかいるし、小宮くんも…」

「そんなことを言ってたら、気持ち、伝わらないよ!」

「…行く…」

「頑張ってね!」

「うん」


3人のいる場所に向かい歩き出して、三歩目で、足が止まってしまった。

やっぱり無理だ、行けない…
渡すだけなのに…

その場から引き返し、愛菜のところへ戻った。

落ち込んだ私のことを愛菜は慰めてくれた。

「…1年後があるよ!」

「…」

結局、彼にチョコレートを渡すことは出来なかった。


でも、遠くから見ているだけでいい…

彼の存在が確認できればいい…


そう思い続けて、1年が過ぎた。


目覚めてから眠るまで、そして夢の中までも渡部くんのことを忘れない時はないくらい、彼のことを好きになってしまっていた。
< 63 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop