見つめていたい
私はそのことを、愛菜に打ち明けた。
「愛菜…私…」
「好きになっちゃったんだ…」
たしかに彼はスタイルもいいし、背も高くカッコいい
けど、私は、あの神秘的で優しそうな彼の目…
吸い込まれそうな、その澄んだ瞳の虜になってしまったらしい。
その想いは変わらぬままにバレンタインを迎える。
彼に想いを伝える絶好の機会だった。
初めてチョコレートを作ったものの、四六時中、渡部くんの側に富永さんがいるし、私には勇気が無かった。
放課後ーーー
「胡桃、早く行かないと、渡部くん行っちゃうよ」
「だって、富永さんとかいるし、小宮くんも…」
「そんなことを言ってたら、気持ち、伝わらないよ!」
「…行く…」
「頑張ってね!」
「うん」
3人のいる場所に向かい歩き出して、三歩目で、足が止まってしまった。
やっぱり無理だ、行けない…
渡すだけなのに…
その場から引き返し、愛菜のところへ戻った。
落ち込んだ私のことを愛菜は慰めてくれた。
「…1年後があるよ!」
「…」
結局、彼にチョコレートを渡すことは出来なかった。
でも、遠くから見ているだけでいい…
彼の存在が確認できればいい…
そう思い続けて、1年が過ぎた。
目覚めてから眠るまで、そして夢の中までも渡部くんのことを忘れない時はないくらい、彼のことを好きになってしまっていた。