見つめていたい




東京から60分間、列車の旅…なんて、2回目になると少しだけ慣れた感じ、ただ今日はひとり旅なのでさみしい、あんな五月蝿いお母さんでも、やっぱりふたりのほうが楽しい。


バスの中は男子だらけ、東京では無い特殊なラッシュ、その中に女子は、私とたまたま乗り合わせた片平さんのふたりきり

男子の多さに圧倒された私達 は、いちばん後ろの席に小さくなってちょこんと座っていた。


「昨日はたいへんだったね、大丈夫なの?」

「あ、うん、もう平気」

「そう、よかったね!」

「ありがとう」

「でもさあ柚木くん…

愛原さん、もっと近くに寄って…大きな声じゃ男子に聞こえちゃうから…

うん…?

片平さんは私の耳もとで、ヒソヒソと昨日のことを話してくれた。

柚木くん、なんのためらいもなく、愛原さんのことをお姫様抱っこして、保健室へ…カッコよかったなぁ…まるで映画のワンシーンみたいだった

保健室の理恵先生から聞いたよ、私、それ聞いたら恥ずかしくなってしまって

わかるわ~その気持ち、柚木くんてめっちゃイケメンだからね

ふ~ん、イケメンなの?

ふ~んて…彼がイケメンじゃなければ、世の中にイケメンは存在しないと思うけど、愛原さんて相当な面食いなんだ

違う違う、柚木くんの顔見たことないからわからないよ、保健室にプリント運んで来た時も、後ろ姿しか見ていないし

まじですか?じゃあ今日見れるね、お楽しみ!窓際の前から3番目の席だよ、チェックしたらあとで感想、聞かせてね!

感想?


私の中でイケメンは


世の中にひとりしかいない…


『東ヶ丘高校前… プシュウ…』

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