見つめていたい
バスを最後に降りた私と片平さんは、前の男子の集団の、いちばんうしろについて歩き始めた。
その男子の集団の中でいちばん後ろを歩く、ひとりだけ頭がつき出て、茶色がかったウェーブヘアの男子が目立つ
たぶん、間違いなく昨日助けてくれた柚木くんだ
…でも、なにかが似ている…
歩き方さえも、私がずっと見てきた彼と全く同じ雰囲気…
教室よりも声をかけやすいと思い、片平さんに協力してもらった。
ふたりで柚木くんの後ろから声をかけた。
「おはよう!…あの!…柚木くん?…」
すると周りの男子が数人振り向いたが、すぐにまた歩いて行ってしまった。
その場に立ち止まっているのは、茶色がかったウェーブヘアの彼ひとり。
「昨日の、お礼が言いたくて」
「別に、いいよ」
そう言いながら振り向いた彼、柚木くん
「いえ、でも、もう一度、言わせてください」
彼の履いていた真新しい革靴から、目線を上げてゆく。
細くて長い足
紺色のジャケットに光る東のマークの第1ボタン
紺色の細いネクタイ
東ヶ丘高校のバッチ
そして艶のある唇にスラリと…高い鼻……
ブラウンの・・・私の姿が小さく映る
ブラウンの・・・・輝く瞳!?
違う!
柚木くんじゃない!!??