ヴァンパイアの花嫁
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疾走する馬がいきなり止まった。


ダーモッドが綱を引いたのだ。


ダーモッドの腰に手を回していたシェリルの身体がダーモッドにぶつかる。


「ダーモッド、どうしたの?」


「ティナ……」


振り返ったダーモッドの顔は蒼白にだった。


ティナは顔を上げダーモッドの体から覗くようにして前を見ると男がひとり立っていた。


大柄な男、歯が尖っている気味の悪い男。


「下級のヴァンパイアだ」


ダーモッドの呟きはティナの耳にも聞こえた。


「下級のヴァンパイア……」


ヴァンパイアの響きにティナが身体を震わせた。


まるであの男のようだった。


父と母を殺したあのヴァンパイア。





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