ヴァンパイアの花嫁

ティナ

扉がノックされた。


エミリオが出ると廊下に婚約者のアシーネが立っていた。


「下ではレオン閣下が姿を消したと騒いでいるわ。それにこの血の香はなに?」


アシーネは部屋の状況を見て口をつぐんだ。


この部屋には少女の血とレオンの血の匂いが混じっている。


ソファで眠っているレオンを見れば顔色がいつもより悪いことがわかる。


そしてベッドの上の少女は苦しんでいた。


「血の儀式をしたのね?」


こんな時になぜ?


「ティナちゃんはカサンドラに襲われたんだ。血をたっぷり吸われていて緊急を要した」


「そうだったの……」


アシーネが苦しむティナの頬に触れた。


「苦しんでいて見ていられないわね」


「あぁ……レオンが眠っていてくれて良かったよ。こんな姿をレオンが見たら苦痛だったろうからね」


「レオン様も具合が悪そうだわ」


「ティナちゃんに生気と血を分けたせいさ。レオンでなかったらとっくに死んでいる」


レオンだからこの程度で済んでいるのかもしれない。




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