青春サイダー
放課後。

ある程度の人が帰ったところで、彼に近づいて服の袖を引っ張った。

「あの、ちょっと話したいことがあるんだけど、今大丈夫?」

訝しげに私を見る。

そりゃ突然知らない女子に呼び出されたら怖いだろうな。


廊下に出て、階段横の少し奥まった場所へ誘い出す。

まだ怪訝な顔をしている彼に、思い切って尋ねた。

「体育祭のダンス、ペア決まった?」

すると彼は少し苦い顔をして呟いた。

「あぁー、ダンスね....」

まだ決まっていないような反応。

私は勇気を振り絞り、勢いに任せて声を出した。

もう、どうにでもなれ!!!


「実は、前から深海くんと仲良くなりたいなって思ってて、もしよかったらペアになってほしいの....!!!」


少し驚いた顔。

続いて困惑。

「俺、足引っ張っちゃうかも」

私は手を顔の前でぶんぶん振って、ヤケクソになって言った。

「大丈夫! 私も下手だから!」

だんだんと取り乱していく自分が急に恥ずかしくなって、俯いて足元を見つめた。

すると、頭上で声が聞こえた。

「そういうことなら、ぜんぜん、いいよ」

私は勢いよく顔を上げ、呆然と彼を見つめた。

その一瞬の後、うれしさと興奮が込み上げてきた。

「ほんとに!? やったー!!」

めちゃめちゃ喜んでいたら、彼も笑顔になった。

彼が友だちと喋るときにする無邪気な笑顔が、今は私に向けられている。

そう思うと、居ても立っても居られなくなった。


さらっと、しかし確実に、連絡先の交換に持ち込む。

「ね! LINE交換しよ!」

すると少し笑って

「俺、LINEやってないんだよね」

そう言ってポケットからガラケーを取り出し、ひらひらとかざした。

少し驚いたけれど、彼の電話番号を電話帳に登録した。

「ちゃんと繋がるか、電話かけてみてよ」

そう言われて試しに電話をかけてみた。

深海くんの携帯の画面に、私の番号が表示される。

すると彼は、携帯を耳に当てて電話をするふりをした。

私も照れながらスマホを耳に当てる。

「もしもし」

深海くんの声が電子音となって耳から伝わってきたとき、私は夢を見ているのかと思った。
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