緋色の勇者、暁の聖女




 村を出て、長に教えられた森を歩く。この森を抜けたらすぐに岩山があって、それを登ってしまえばすぐに祭壇だ。

 足どりは決して軽いものではなかった。


 ――――むしろ、重い。


 レイを救う方法が見つからないのに、祭壇はどんどん近づいてきていた。

 不意に、後ろを歩いていたカナリが僕の腕を引いた。


「――――ねえ!」


 カナリは声を潜めて言った。


「長老様が言ってたヒイロの中にある光って何?」

「……分からない」

「もしかしたらそれが、レイを助けられる方法かもしれないんでしょ?」

「そうかもしれない……」


 僕のハッキリしない返事に、カナリは声を荒げた。


「分かってる? ヒイロ! 見つけなきゃいけないんだよ?! そうしないとレイが……!」




「――――分かってるよ!」




 僕もつい、カッとなって大きな声を出してしまった。だって……

 自分の中にある光。それがレイを救える方法かもしれないけど、全然分からなくて。どうしたらいいのか、何をしたらいいのか、酷くもどかしい。

 カナリに当たってもしょうがないのに……
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