緋色の勇者、暁の聖女
「おはよう、ヒイロ! ほらほら! 出発の準備する! 今日はやっと聖堂に着くんだから!」
昨夜僕が勇者になる、ならないで揉めたけど、カナリからは気まずい雰囲気は感じなかった。いつも通り明るくて騒がしい。クレールは相変わらず無口で無愛想だったけど、それもまあ、いつも通り。
だけど、それにほっとしていた。
僕は……二人に見放されて、この世界に一人で放り出されるのが一番怖かったのかもしれない。
普段は一人でいてもどうって事はないけど、勝手の分からない世界で一人でいられる程、僕は心が強くはない。こんな所で放り出されても、どうしていいのか分からないし。
ずるい考えかもしれないけど『勇者』という役割があるうちは、嫌でも二人は僕を放り出したりは出来ないんだろう。
勇者にはやっぱりなりたくない。
たけど、帰る方法が見つからない間は、二人と一緒に行動するしか仕方がなかった。
◇