Hey girls!調子はいかが?
「瞳。」
「ん?」
「ありがとね。」
「え?」
楓先生が出ていって晴と2人になった病室。そんな中で突然晴にお礼を言われ、私は戸惑った。
「助けてくれてありがとう。」
「私、何もしてないよ…。」
結局何もしてないのだ。私がしたことはナースコールを押したことだけ。どれだけ声をかけてもあの時晴は目を開けることはなかった。
「いやいや、ナースコールしてくれたんでしょ?」
「それしかしてない…。」
「んーん、それがなかったら下手すると私息止まってたかもしれない。でも瞳が早くナースコールしてくれて、先生呼んでくれたから助かった。ありがとう。」
「晴…。」
うるうるしてしまう。やはり頭でわかってはいても苦しんでいる人を見ていることしか出来ないこの辛さはなくならない。だけど晴は本当に穏やかな顔をして微笑んでいる。
やっぱり決めた。晴のこの笑顔を守るために、私は医者になる。たとえ晴がなんと言おうと、私は晴が苦しんでいるときに見ていることしか出来ないのはいやだ。
「晴、あのね…。」
私の決意を言いかけたところで楓先生が帰ってきた。
「おまたせ!ゼリー貰えたよ。」
「あ、ありがとうございます。」
晴がゼリーを受け取る。
「ごめん、瞳の話さえぎっちゃった。なんだった?」
晴が問いかけてくる。やっぱりもうしばらく黙っていよう。
「ううん、やっぱりなんでもない。」
「そうなの?」
「退院した後に話すね。」
「わかった。」
これでひとつ、退院するための目標が増えた。楓先生はなんとなく察しているのか、微笑んで私たちのことを見守っていた。
「よし、晴ちゃんゼリー食べられそうだね。」
晴が半分ぐらいゼリーを食べたところで楓先生が切り出した。
「はい、大丈夫です。」
「じゃあそろそろ私は戻らなきゃ。調子は大丈夫?発作起きそうとかなんかある?」
「しっかり寝たし。私は大丈夫ですよ。」
晴が答える。
「瞳ちゃんは?」
「私も多分大丈夫です。」
「まあその多分とか大丈夫とかが心配なんだけどねぇ。」
楓先生は私たちの返事を聞いて苦笑い。
「2人ともさっきよりは熱も下がってそうだし顔色もいいからちょっと安心かな。じゃあ、何かあればまたナースコールするんだよ!」
「はい。」「はーい。」
その後、晴は無事にゼリーをたいらげ、運ばれてきた夕ご飯も残したけど私も晴も何とか食べ、吸入と夜の回診も何とか乗り切り、少し楓先生とまた話して1日が終わった。
楓先生とはかなり打ち解けて、仲良くなれた。