【続】0.0000034%の奇跡
この前の若者たちといい、今回の女子高生といい、私は本当に恵まれている。
一瞬、歯科医師であることを良い意味で忘れさせてくれる。
もう一人の自分を覚醒させてくれる。
ギターの音色ひとつで私は知らない間に、違う景色を見ることが出来ていたんだね。
こんな経験がなければ、そう気付くことはなかったかもしれない。
改めてこの境遇に感謝だ。
家の中に通されたスタッフさんは母親と夏美さんに再度企画内容を説明した。
その間に設置されていくモニター。
繋がるまで式当日の段取りを確認。
「で、肝心の槙田芹さんなんですが…お察しの通り予約の取れない歯科医さんなんで本業がお忙しいんですね」
申し訳なくモニターに向かい頭を下げる。
これから話す内容に若干不安そうな表情を浮かべる母娘。
「もう一度結婚式の日取りを確認したいのですが、11月9日で間違いないですか?」
「はい」
お姉さんは現役のウェディングプランナー。
たくさんの同期や仲間から祝福を受けるのだろう。
その花向けの一員になれたらただそれでいい。
「ちなみに、槙田芹さんが来たらお姉さんどんなリアクションすると思います?」
「めちゃくちゃ喜ぶと思うし…泣くと思います…本当すごく好きなんで」