【続】0.0000034%の奇跡
「何の用ですか?」
「最近会ってないなぁ〜と思って、俺も忙しかったんだけどやっと時間出来たから」
「……ん?それだけですか?」
「そうだよ!……と言いたいところだけど、今日は報告があって」
「報告……!?」
「うん、実は俺……アメリカ行くことにした。本格的に演技の勉強しようと思って」
「アメリカに?」
「今は入ってた仕事消化してる最中。来年の頭には行く準備してる。その前にやっぱ会っときたくなって」
チャラいのかしっかりしてるのかよくわかんない人。
こんな普通のクリニックに有名俳優が変装して来るなんて……
「頑張ってください」と笑顔で見送るしかない。
「それと、雑誌見たよ」
「うっ……」
うわ、気まずい。
恥ずかし過ぎる…!
引きつる笑顔。
スッと目の前までやって来て懐に入るのが上手い。
サイドに垂れている後れ毛を片方だけ耳にかけられビクッと体が反応した。
しまった、この瞳に捕まるのは危険だったんだ。
とっさに視線を外したのに腕を掴まれる。
顔を上げたらまた至近距離で……
「すげぇキレイだった……やっぱあの時奪ってりゃよかったかな」