【続】0.0000034%の奇跡
「シッ!此処で変なこと言わないで」
「あ〜ぁ、マジで旦那さん羨ましい」
「声大きいってば…!」
ヤバイ、絶対皆に聞こえてる。
そしてこれはわざとだ。
意地悪な顔してるもん。
「諦めたつもりだったのにな…会うとやっぱ抑えきれなくなるね」
ジリジリと詰め寄られて後ろは壁だ。
すかさず口を両手で覆い隠す。
「ダメなの?」
「…ダメに決まってるでしょ」
睨むとケラケラ笑っちゃって、年上からかうんじゃないってば。
頭をポンポンされたらクルリと背を向けた。
「やっぱ旦那さんには勝てないか…」
「無理……智くん以外は無理」
「いいね……その潔さ、嫌いじゃない」
別に好かれたくて言ってるんじゃない。
何を言ってもプラス思考に受け取る彼が何を企んでいるか見当もつかないよ。
「でも知ってる?」って聞くから「何が?」って答えようと顔を上げた瞬間……!
本当に抜かりのない奴……!
抵抗する間もなかった。
チュッとおでこにキスしてニヤニヤしてる姿が腹立たしい。
「そんな顔で言ったって腹立つからもっと欲しくなるってこと」
「はぁ!?呆れた…」
「大丈夫、今のでちゃんと諦めついたよ、だからキレないでよ〜」
待合室をぐるぐる歩いて金魚のフンみたくついて回る彼を冷たくあしらう。