【続】0.0000034%の奇跡
「いいね〜出逢った頃の冷たい感じも好きだな」
「ちがっ、あれは淡々と職務をこなしていたわけで…」
「やっぱ諦めんのやめようかな」
今日一の睨みをきかせると「嘘だよ、本当からかい甲斐あるよね」と肩を抱いてくる。
呆れて物も言えないけど抵抗は続ける。
「やめてってば、用が済んだら帰ってください」
「え〜向こう行ったら当分会えなくなるんだよ?初めて本気になった相手に最後くらい優しくされたいよ…」
「その手にはのりません」
まさかの壁ドンで逃げ道を失う。
ダメだ…完全に調子にのってる。
そろそろ本気出して叱らないと。
「ほっぺならいい?」
「大声出すよ?」
「その顔……マジで最高…」
足を思いきり踏むか股間を蹴るかどっちにしようか考えていたら奥から「もうそのへんで勘弁してもらえませんか?」とカナちゃんが間に入ってきてくれた。
本当の白衣の天使とは彼女のことだと心底思う。
カナちゃんも呆れて見てる。
ありがとう〜!とアイコンタクトした瞬間に気を許してしまった。
「チャンス!」と声がして頬にほんの一瞬のキス。
「ちょっと……!!」
突然過ぎて呆然としてたら
「あ、ごめんなさい。これは僕のさよならの儀式です」ってふざけ過ぎ。
“僕”なんて普段言わないくせに!
腕の下をすり抜けてカナちゃんの方へ逃げる。