【続】0.0000034%の奇跡
「からかってゴメンね?今日は会えて良かった、いつになるかわかんないけど帰って来たらまた会いに来るね〜」と帰って行った。
「またヤラれちゃいましたね、いります?コレ」
事情を知るカナちゃんはクッションをそっと差し出してくれた。
自分のキャパが超えた時、いつもクッションを真下に殴ることで自分を保っていた姿を彼女は知っている。
今回も気を遣って用意してくれたみたいだ。
「いや、大丈夫、ありがとう」
怒るより呆れてるから殴る気にもならない。
「私って……そんな隙だらけなのかな?」
静かな待合室に響く私の声。
「あんな有名な俳優、通わせちゃうって凄いことですよ?まぁ確かに、最近の先生…色気半端ないですからね」
マジマジと近くで舐めるように見ながら私に言う。
「いや、カナちゃん…それは今、私の欲しい言葉じゃない」
「アハハ、でも此処にいる間は私がお守りいたしましょう」
何とも心強いお言葉……
瞳がウルウルして鼻の奥がツーンとなる。
「カナちゃ〜ん」と抱きついてヨシヨシしてもらう。
「黒川春樹を目の前に流されなかったですね、エライエライ、旦那さん一筋なところ、本当尊敬します」
「え?流される?え、無理」
「そのことになると素に戻りますよね?きっとそういうとこ黒川春樹に遊ばれてるんですよ」