【続】0.0000034%の奇跡
「もう一回します?」
「しないって!」
「アハハ…!」
「でもカナちゃん、唇柔らかいんだね」
「もしかして欲しがってます?」
「だから違うって!」
私だってそんな趣味はないよ…!
一瞬背筋凍ったけど、心の中のモヤモヤ感はいつの間にか消えてた。
誰もいない待合室で追いかけっこしながら笑い合う。
「先生は先生のままでいいんですよ」って言われた気がした。
暗黙の了解で出てくるクッションのように、私を元に戻してくれる存在だ。
「あの感じじゃ黒川春樹、当分来ないんじゃないですか?」と言ってたけど、数年後にはハリウッドデビューしちゃって成功を手にし、本当に手の届かない存在になるなんてことはまだこの頃の私たちには想像出来なかった。