【続】0.0000034%の奇跡
【0.0000034%の……】
白衣を脱いでロッカールームの椅子にかける。
スクラブからタイトワンピースへ。
アップにしていた髪を下ろしピアスを付け替えたら、メイク直し。
鏡を見ながらグロスを塗る。
定時になり続々とクリニックスタッフがロッカールームへ入って来た。
診察時とはまるで違う私の容姿に皆フリーズしている。
「槙田先生っ…!?今夜はデートですか?」
お気に入りのヒールを履いてコートを羽織る。
きっと色々と質問されてすぐ出れそうにない状況を予測しての素早い行動を取ったつもりだが、やはり見つかってしまった。
いつもなら少し談笑したりして余裕あったりするけど、今日という日は一刻も早くこの場から立ち去りたい。
皆の視線が痛いほど突き刺さる……
「えっと…今日は……結婚記念日です」
エヘヘっと柄にもなく可愛く言ってみる。
ニヤニヤした顔がいくつもあって自然と道が開けた。
「お疲れさまでーす」と足早に出て行く私に「キレイです」と新人助手の子から声をかけられ微笑み返す。
「楽しんできてね〜」やら「幸せオーラだだ漏れだぞ〜」とロッカールームの外まで皆が見送ってくれてこっ恥ずかしい。
いつもより気合い入ったコーデって思われてるだろうな。