【続】0.0000034%の奇跡



「だって智くん、よく焦らすから…」



「ハハハ、その時もむちゃくちゃ思ったけど…それ、可愛すぎだから」



「うーん…でも私はやっぱり…」



そう言いながら再びコートを引き寄せた。
ゆっくり重なる唇はすぐに離れる。



「こっちのキスがいい……」



一瞬面食らった顔の智くん。
肩を抱いていた手は腰に回る。
さらにグッと隙間もないほど強く抱き寄せられた。



「ちゃんとしたキスは帰ってからにする」って訳のわからない宣言されて少し早足で私の手を引き歩き出す。
「え?どうしたの?」と聞いても何も答えてくれなくて、向かった場所は駐車場だった。



「せっかくの記念日にごめん……帰っていい?」



あまりの気迫に「はい」と答えるしか出来なかった。
流れる景色を見ながら、今年のデートは早めに帰るんだなぁ〜なんて思いながら家路に着く。



「ただいま〜」と誰も居ないとわかりつつ、つい言ってしまう。
玄関の電気スイッチを手探りで押そうとしたら急に後ろからハグされて「わっ…!」と驚いてしまった。



「芹…さっきのキスした後に言ったやつもう一回言って?」



耳元で囁くように智くんは言う。
何だ、そういうことかと薄暗い玄関で再び見つめ合ったらコートをつまんだ。






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