【続】0.0000034%の奇跡



「そんな何度もハミングしてたら頭の中で譜面は出来てんでしょ?」とまで。
ヒィ〜!その顔でジワジワ追い込まないで〜。
顔面蒼白な私の顔を覗き込むように……



「芹のオリジナル、此処だけに留まるのは勿体無い」



「む、無理だよ〜」



「いや、アップ出来るほどの出来栄えだと思うよ?短くてもいいじゃない、何ならメロディーだけでも録音して残しといた方が良い!」



って何で智くんが興奮してんのよ。
「ママのお歌聴きたい!」と瑚子まで言い出すし……
何故か2人とも俄然やる気で……



「アップルパイが焼けるまで弾いてみよう〜!」とソファーまで連れてこられた。
私のギターと瑚子もギターを持って嬉しそうに隣に座る。
自信ないのに……これ以上ないくらいの可愛い笑顔で「ママと一緒に弾く〜」はズルい。
断われないじゃないか。



仕方なくギターを構える。
目を閉じて浮かんでるメロディーを頭の中の譜面に並べて、最初は音をはめていく作業だ。
自分の中の絶対音感がフル稼働して自然と手が動き出す。



こんな感情は初めてだ………
まさかハミングしてたメロディーに伴奏をつける日が来るなんて……
ふと、降りてきたって言うのかな?
私だったらこう落とし込む……という感じ。



何故かずっとリピートしていたメロディーを改めてハミングする。
隣で瑚子もずっと聴いていて覚えてたのか一緒に口ずさんできた。



微笑ましくて幸せな気分に浸る。
そんな感情がメロディーに沁み渡るように……
ひとつひとつの音を合わせて……






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