【続】0.0000034%の奇跡



「カット!OKでーす!」と声がかかり皆がホッと胸を撫で下ろした瞬間。
すぐにモニターチェックするスタッフさん。
緊張の糸が途切れた私にいち早く駆け寄ってくれるのは他の誰でもない智くんだ。



「お疲れ様」って頭を撫でてくれる。
それだけで涙が出そう。
抱きつきたいのを必死で我慢。



「何か昨日の芹見てる感じだった」と言わせるほど本当に素に近い表情で撮れたと思う。
おかげで一発OKでした。
分刻みのスケジュールな為、午後からバラードバージョンも撮ることになっている。



こちらも私服でギター片手に街のど真ん中で突然弾き語りをするというもの。
撮影許可は取れているがその他は何も知らせていない強行突破過ぎる内容。



もしも槙田芹が路上で弾き語りしたらどうなるか見てみたいと猪俣さんに言われた。
どうにもならないですよ、あまりやったことないんですから。
やる勇気がなかっただけですけど。



でもまぁ、それで良いMVが撮れるなら仕方ないか。と言い聞かせる。
気持ちの切り替えは割と早い私。
周りに誰も居ない方が気にすることなく歌えると思っていた。



人通りが多くなる夕刻。
指定された場所は駅前の大きな広場。
公園と駅が直結されていて公園寄りの広場のど真ん中に大きな木が立っていて、その木を背もたれに囲むようベンチが設置されている。






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