【続】0.0000034%の奇跡



ベージュのトレンチコートの下には黒いパーカー。
中にボーダーTシャツ、下はスキニージーンズにスニーカー。
完全にオフ日の私服でギターケース抱えてベンチに向かって歩く。



スタッフさんに囲まれカメラ向けられたままの私は即顔バレしている。
「自然にありのままで歌ってください」と言われたけど、路上での弾き語り経験があまりにも少ない私には無理難題な話で。
遠いけど見守ってくれている智くんの存在だけが今の支えだ。




日が落ちる前のオレンジ色に照らされたベンチ。
そこにギターケースを降ろしギターを出したら「やっぱ槙田芹だよ」と何処からか声が聞こえてきた。



指定された場所で地べたに座り込む。
何の告知もないまま突然始まった弾き語り。
ルーティーンを決めて目を開けたら……



疎らだった人の数が列を作って目の前まで迫っていた。
スタッフさんに誘導されていたので完全にエキストラだと思い込み、ただただ歌うことだけに集中……




前列の人たちは座って同じ目線で聴いてくれている。
その後ろにも人の顔が溢れていてスタッフさんを見つけれないほど、気付けば周りに人が溢れていた。
凄いエキストラ盛り込んでるな〜と気にしないようにした。



後で聞いた話だと、エキストラではなくその時本当に集まった人たちであっという間に100人近く押し寄せたとか。
規制するのに一時パニックになったみたいで凄い手応え感じたよと猪俣さんに太鼓判を押され、有り難い話で撮影もこれまた一発OKでした。





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