【続】0.0000034%の奇跡



前代未聞のコラボ雑誌はその後も異例の増刷が続いている。
テレビ番組への出演は控えている為、今やライブ動画と撮影した雑誌の誌面のみ発信している現状。




予想以上の反響で周りの環境がどんどん変わっていくのはストレスの根源になると分かっていた。
本業に悪影響なことだけは絶対に避けなければならない。
職場のスタッフや私の手を必要としてくれる患者さんを巻き込むことだけは決してあってはならないんだ。




カメラの前で光に照らされているのが本当の私じゃない。



マイクの前でレコーディングしているのも私じゃない。




本来の私は、
白衣に袖を通し歯の治療を施している。
そして時々、弾き語り。
こっそりね。
そこは崩したくないし崩されたくない。



身の丈に合ったライフスタイルが私の原動力なの。



そう、身の丈に合ったライフスタイル………




「いや、だから、その……ユイちゃん?私はいち歯科医師であって…」



「わかってます、先生は歌手でもタレントでもありません」



そこの意思疎通は出来てるんだよね?
え?それでも真顔なのは何故?
この緊張感は何なの?



突然クリニックにまで押しかけてきて何事かと思いきや、ユイちゃんに「これ読んでからでいいんでオファー引き受けるか先生自身に決めて頂きたいんです」と厚さ2センチ程の冊子を渡された。




「これは……なに?」と恐る恐る聞いてみる。



「ドラマの脚本です」と即答されてもピンとこない私。
いつのクールに放送するのか、キャスティングもまだ白紙に近いそう。
ただ、制作サイド側から受けたオファー。






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