【続】0.0000034%の奇跡

チューニングは瑚子の大好きな時間。
得意げに音を合わせてくる。
その姿にびっくりしているユイちゃん。
バッチリ撮影されながら鼻歌交じりに歌い出す。



発生練習で最適なのは高低・裏声ありの「First Love」
独特のテンポで難しい曲だけど歌い甲斐はある。
静かに入るＡメロが好き。
切ない歌詞とサビにむけてのファルセットと息遣い。



この曲もよく練習したなぁ…と感慨深く浸りながら弾き終えると、涙で溢れているユイちゃんの真っ赤な目。



「一曲目でこの曲はヤバイですよぉ〜めちゃくちゃ上手いじゃないですか、失恋した時の事思い出しちゃった」と目尻の涙を拭う。



チューニングし終えた瑚子も私が歌っている途中で寝てしまっていた。
子守唄になっちゃったね。
いつもよりはしゃいで疲れちゃったかな。



「あの、私、スピッツの楓が聴きたいです…」



お、渋いね。
ユイちゃんスピッツ聴くんだ。
チェリーでも空も飛べるはずでもロビンソンでもなく楓なのね。
懐かしいなぁ。



頭の中でメロディを確認しながら同時にコードを押さえる。
最初は手探りで音を当てていく感じ。
徐々に音が繋がって手も早くなる。
「間違えたらゴメンね」と曲と歌詞を手繰り寄せ何とか歌い出せた。