Sweet break Ⅲ
確かに年度末で互いに忙しく、休日に会ったりは出来なかったけれど、平日の仕事帰りに数回程度二人で食事には行ったことは行った…けれど…。
『う~ん…それが、あんまり変わらないんだよね…職場では、ほとんど今までと何も変わらないし、仕事帰りに何度か食事には行ったりはしたけど、取り立てて甘い雰囲気は…』
『ほぅ…甘いのが欲しいのね、朱音は』
『そ、そういうわけじゃ…』
紗季に言われて、自分が描いている恋人像が結構甘いことに気が付き、誤魔化すように目の前のグラスに残っていたサワーを煽った。
『関君も、いろいろ考えているんじゃないかな?』
『いろいろ…って?』
『さすがに素人相手にいきなりがっつくわけにも行かないでしょう』
『ちょっと、素人って…』
紗季の不躾な表現に眉を顰めると、紗季は舌を出して『あ、恋愛初心者ね』と即訂正。
『それとも、朱音はがっつかれたいの?』
『まさか!?』
思いっきり首を振り否定すると、『そうでしょう?』と笑う。
『どのみち、恋人との恋愛工程なんて、遅かれ早かれ行きつく先は一緒なんだから、ゆっくり進んだ方が楽しめるものよ』
紗季の話を聞きながら、そういえば前に関君も同じようなこと言っていたな…と思い出した。
確かに、今すぐそういった関係になりたい訳じゃないけれど、二人の間があまりにも変わらなさ過ぎて、少し不安になっているだけなのかもしれない。
『…紗季は、どうだった?』
『ん?』
『高崎さんと恋人になった時、それまでと何か変わった?』
紗季は、同じ営業の先輩だった高崎さんと1年程前からお付き合いしていて、今は千葉と神奈川で中距離恋愛2年目に突入している。
急に自分の話題にふられた紗季は、『う~ん、うちらの時かぁ』としばし考えるそぶりをすると、なぜか徐々に頬を赤らめる。