Sweet break Ⅲ
Sweet break③

初めてデートらしいデートをしたのは、中学3年の夏。
拓海先輩がバイトで貯めたお金で、当時人気のあったディズニー映画を観に行ったっけ。

制服ではない先輩と二人で出かけるなんて初めてだったから、終始緊張しまくって、当日観た映画の内容なんて、ほとんど覚えていない。

でもそれは、私がまだ中学生(子供)だった頃のお話。

今はとうに二十歳を過ぎて、いい大人だ。

相手だって、ほとんど毎日顔を合わせている職場の同僚なのだから、そこまで緊張する必要も無い。

無いはずなのだけど…。

『悪い、少し待たせたな』
『……!!』

待ち合わせ場所に現れた、見慣れない私服姿の関君に、いきなりフリーズしてしまった。

『渋滞も見込んで早めに出たんだが、思ったより道混んでて…って、倉沢?』
『…え』
『俺の話、聞いてる?』
『あ!…うん、だ、大丈夫…私もさっき来たばっかりだから』

実際は30分以上前に到着してはいたのだけど、咄嗟に嘘くさい嘘で誤魔化してみる。

だって予想外だった。

スーツって男も女も、いつもの2割増しに見えちゃうから、きっと私服の関君はもう少し身近に感じられるくらい、イケメン度が下がってくれるだろうとタカをくくっていたから。

ううん、確かに私服の方が、いつもの関君より年相応で近い感じはするのだけど、何よコレ?

白黒のボーダーTシャツにグレイのカーディガン。黒っぽいジーンズに白いバスケットシューズ。いつもより緩く、ラフな感じの髪が、仕事中のクールで冷たい印象を和らげてくれてる。

これじゃイケメン度は、むしろ上がってない?

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