Sweet break Ⅲ
『これって、反則だわ』
思わずつぶやいた言葉に、『何が?』と訝しがられるが、『別に…』とサラリとかわす。
こちらは、通常通り2割ほど下がっているだろうから、周りから見たらどれだけチグハグな組み合わせに見えるのだろうか。
行き交う人々の(主に女性の)視線が痛いのは、きっと気のせいじゃないかもしれない。
『どうする?軽く昼飯でも食べてから行くか?』
関君に問われ、ハタと我にかえる。
容姿の格差は今に始まったことじゃないのだから、気にしないことにしょう。それより、記念すべき関君との初デートを楽しまなきゃもったいない。
今日の目的地は市内最大の多目的公園。
私のリクエストで、公園でお花見デート…と言っても、桜のピークはとっくに終わったので、葉桜見物になってしまうけれど。
『関君、お昼だけど、もうちょっと我慢して、直接公園向かってもいいかな?』
『ああ、別に構わないが…?』
『実はね、私、これ作ってきたんだ』
そういって、手に持っていた手提げ袋を軽く持ち上げる。
『ジャーン、手作りお弁当!』
実は、料理の腕だけは結構自信のある私。
”男性の心を掴むには、先ずは胃袋から”って、よく言うし、これは早速、利用しない手は無い。
少しくらいは喜んでくれるかな?と期待していたけど、そこはさすがのクール男子。
特別嬉しそうなリアクションもなく、抑揚のない表情で『ソレ…ちゃんと食えるんだろうな?』と、いつものように毒づく。
『失礼ね、食べてから言ってよ』
『ま、それもそうだな…ほら、行くぞ』
『え?あ…ちょっと待ってよ』
そう言うと、私から手提げ袋を取り上げて、さっさと先を歩き出す。
サクサクと前を歩く関君の後ろを小走りで追いながら、お弁当の入った袋を持つ関君の左手に視線が注がれる。
もしかして、もしお弁当持ってなかったら、その手には私の手が繋がれたのかな?
…なんて、思わず想像して、ちょっぴり手提げ袋に嫉妬してしまう自分に自嘲した。