Sweet break Ⅲ
Sweet break④

今日の移動手段は関君の車。

私も一応免許は持っているけれど、ほとんどペーパーだから運転には全く自信がなく、申し訳ないから『電車でもいいよ?』と言ったら『こっち(車)の方が自由が利く』と、関君。

折しも”初デート”は、”初ドライブデート”になり、それはそれで別の緊張感が高まった。

淀み無い足取りで進む関君は、待ち合わせた場所から歩いて2~3分した場所に停めてあった、黒色の国産車の前に立つと、軽く運転席のドアに触れロックを解除する。

一瞬どこに乗ろうか迷っていたら、関君から助手席に乗るように促された。

『えっと…じゃあ、失礼します』

そういえば、父親以外の男性が運転する車の助手席に乗るなど、初めてかもしれない。

さながら面接室の扉を開けるような気分で、小さな深呼吸をしてからドアを開け、車に乗り込む。

関君は、私がシートベルトを着けたのを確認すると、慣れた手つきでエンジンをかけ、ゆっくり車を走らせた。

運転席をチラリと覗けば、いつもより数倍もラフな関君が、真っすぐに前を向き、軽くハンドルを握り、スマートな手さばきで車を操作してる。

こんな関君を助手席から眺める日が来るなんて、夢みたい…。

信号で車が一旦停止すると、窓枠に片ひじをかけて、こちらにに顔を向ける関君にドキリとして、慌てて視線を外した。

『なんだ…やけに大人しいな』
『…そ、そうかな?』
『いつもの元気はどうした?』
『…だって、何か助手席って…緊張しちゃうでしょ』
『助手席くらい乗ったことあるだろ』
『ううん、私、家の車以外では、今までなかったかも』

正直に話すと、関君は眉を顰め、『お前の…先輩は?』と聞かれる。
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