Sweet break Ⅲ
Sweet break⑤
『…ウマい』
大きな桜の樹木の下、二人用のシートを引いてお弁当を広げると、早速口にしたツナ入り卵焼きに、関君が嬉しい感想を言ってくれる。
『いっぱい作っちゃったから、たくさん食べてよね』
昨夜から気合を入れて作ったお弁当は、久しぶりの力作で、どの料理も自信作。
『…案外やるもんだな…』
『意外だった?』
『ちょっとな…』
既にランチタイムは過ぎ、遅めの昼食で空腹だったのも、功を制したのかもしれない。
関君は用意したおにぎりやおかずを口にしては、美味しそうに食べてくれる。
『うちは小さい頃から両親が共働きだったし、料理くらいは出来なきゃねって、お姉ちゃんとママゴト感覚でやってたら、自然と覚えちゃったんだ』
『倉沢、二人姉妹なんだ』
『うん、一つ違いだから姉妹っていうより友達みたいだけどね…関君は?』
『弟が一人…5つ離れてる』
『じゃ、まだ学生さん?』
『大学2年、実家で会う度に小遣いせびられる』
『二十歳かぁ一番楽しい時期だもんねぇ…って、あれ?関君って、実家じゃないんだ』
『ああ、社会人になったのを機に、自立しろって追い出された』
『凄いね、独り暮らし…羨ましい』
『慣れれば、気楽で良いけどな』
…あれ?あれあれ?
何だろう?なんか、楽しい…かも?
それに、会社ではプライベートな話なんて絶対しない関君が、こんなにも素の部分を見せてくれるなんて予想外だった。