Sweet break Ⅲ
『関君、例のデータ解析、今日中にできそうかな?』
第一営業課の栗原課長が、関君に声をかける。
『後一時間程で』
『さすが早いな、助かるよ。悪いが、出来たらそのデータを僕と笹本部長まで送ってくれ』
『分かりました』
他課の課長が直々に、関君のところに足を運んでくる。
そのこと自体は大して珍しいことでもないけれど、今の内容…営業データの解析など、関君の仕事では無いはずなのに…なんで?
『自分の仕事は終わってる。問題ない』
私の心の声を察知したのか、目の前で、関君が淡々と答える。
『うちの課長は、知ってるの?』
『ああ、自分の手が空いたら、できるだけ協力するように言われてる。これも今年度の業務実績をあげる上で、必要な仕事らしい』
『なるほど…ね』
分かった風な返事をしながらも、実のところ、全く納得できていない自分もいる。
何故なら、ただでさえ忙しい関くんは、その為に平日の残業が続き、土日も仕事に取られてしまい、交際を宣言されてから今日まで、ひと月も経ったというのに、まともにデートらしいデートもできていないのだから。
『ねぇ関君、私にも何か手伝えること…』
『無い』
『…だよね』
確かに、私の技量じゃ、せいぜい関君の邪魔をしないように、大人しくしているのが最善かもしれない。
仕方なく空いたカップを手に、席を立ち給湯室に向かう。