Sweet break Ⅲ
手洗いから戻ると、関君は大きな幹に身体を預けたように寄りかかって、腕を組んだまま僅かに頭を下げ、目を閉じて眠っているよう。
『…関君?』
ほんの少ししゃがんで声をかけるが、返事は無く、男性にしては美しすぎる寝顔にもう少しだけ近づいてみると、静かな寝息らしきものが聞こえてくる。
この前、やっと仕事が落ち着いた…と言っていた。
久しぶりの休日で、本当はゆっくり休みたかったかもしれないのに、もしかしたら今日の為に無理をしてくれたのかもしれない。
トクン…
沈めたはずの心臓が、また小さな波を立て始めてしまう。
思わず長いまつ毛に触れてみたい衝動に駆られるも、理性で抑え込み、その代わりにこのチャンスとばかりに、そっと隣に腰かけてみる。
だって一応、”彼女”だし、これくらいは許されるよね?
誰に向けた確認なのか、自問自答し、勝手に了解を受けたことにして、大胆にもなるべく荷重がかからないように、関君の肩にそっと自分の頭を寄せてみる。
”あ、ちょうど良い高さなんだ…”
思ったよりあった身長差で、寄せた頭が関君の肩口にちょこんと当たり、しっくりと落ち着く。
もちろん、このまま一緒に眠るつもりなどない。
関君が目を覚ます前には、気付かれないように、どくつもりだった。
それでも、ほんの少しの間、このままで居たくて…。
午後の温かな春風が心地よく、この幸せを噛みしめるように、静かに目を閉じた。