Sweet break Ⅲ
正直言っちゃうと、自分で起きるのも簡単なのだけど、ここは”彼女”らしく、”彼”に甘えるもんでしょ?…なんて、ガラにもなく計算高い女を演じてみることにする。
もう一度差し出された手に、『ありがと』などとにっこり微笑みながら、計算している割には、緊張で震えてしまう自分の右手を差し出す…と、
『パパ!』
『ッ…何だ!?』
手の触れる直前、関君の足元にしがみつく、小さな女の子。
思い切り掴まれたために、バランスを崩しそうになった関君は、転ばないように女の子を支えながら、何とか体制を整える。
『大丈夫!?』
関君にしがみついた子は、私の声に驚き、次にしがみついた人物の顔を見上げると、今度は目に一杯の涙を溜めて『パパとちがう…』と呟くと、真っ赤な顔をして泣き出した。
『…迷子か』
『お父さん、関君と同じような服、着てたのかもね』
まだ5~6歳くらいの彼女をなだめつつ、話を聞けば、やっぱりお父さんと一緒にトイレに行って、はぐれてしまったらしい。
ひとしきり広場の周りを見渡してみても、それらしき人物は見当たらない。
そもそもこの公園は、いくつかのエリアに分かれていて、それぞれのエリアも広い為に、簡単には見つかりそうになさそう。
『こう広いと、探すのも難しいね』
『管理棟に行けば、放送かけてもらえるかもな…行ってみるか』
『そうだね、きっとご両親も探しているだろうし』
そう決めると、未だ涙目の女の子の前にしゃがみ込み、怖がらせないように視線を合わすと、お父さんを探すために、管理棟まで一緒に行くことを丁寧に説明した。