Sweet break Ⅲ
『いや~良かったですなぁ…さっき、あなたから電話をもらった後、直ぐにご両親が訪ねてきましてねぇ、容姿も名前も同じだったから間違いないって話でね、物騒なこのご時世ですし、ホントすぐに見つかって良かった、うんうん良かった』
いかにも人の良さそうな白髪頭の50代後半の職員は、何度も頷き、”良かった”と繰り返す。
待ちきれなかったご両親と、管理棟の入り口で再会したななみちゃんは、ホッとしたのか、また大粒の涙を見せて泣き出し、ご両親に甘えるようにギュッと抱きついてる。
さっきまで、マセてると思っていたななみちゃんも、今はただの幼稚園児に見えた。
ななみちゃんの両親は、共に30代半ばといったところだろうか、どことなく二人とも、面影が似ていて、親子なのだとすぐにわかった。
『本当に、ありがとうございました、なんとお礼を言っていいのか…』
よほど心配していたのか、お母さんは、ななみちゃんの弟を胸に抱きながら、涙目で何度もお礼を言い、やはり関君と同じような白黒のボーダーTシャツを着た実直そうなお父さんは、力強く関君の手を握りしめる。
何かお礼を…というご両親のご好意を丁重にお断りし、何度も『バイバイ』と手を振る、ななみちゃん親子と別れ、管理棟を後にし、公園の駐車場に着いたのは、17時近くになっていた。
辺りはだいぶ日が落ち、薄暗くなってきている。
『ななみちゃん、すっかりママとパパに甘えてたね』
『生意気言っても、結局チビッコだろ』
『とかいって、関君、いろいろ真面目に答えてたね』
『ああ、おかげで、俺は一気に疲れたがな……と、今17時か…』
腕時計を確認しながら、関君が呟く。
『昼も少し遅かったし、まだ夕飯には早いな…』
関君の独り言を聞きながら、今日はここでデートがおしまいではないのだとわかって、ホッとする。
確かに、まだお腹は全然空いていないし、例えば今から映画を見るにしても、時間的に中途半端だった。