Sweet break Ⅲ
Sweet break⑦
少し遠回りをしながら、夕暮れのドライブを堪能し、毎日通いなれた職場に着いたのは、18時を少し過ぎた時刻。
日曜日のこんな時間に誰もいないと思った自社ビルは、予想を反していくつかの窓に明かりが点いていた。
関君は車を構内に入れ、平日とは違いガランとした来客用の駐車場に停めると、一旦エンジンを切る。
『すぐ戻るが、寒いなら、エンジン付けとくか?』
『ううん、大丈夫』
『じゃ、悪いな、10分ほどで戻る』
運転席のドアを開け、出ようとする関君を、慌てて呼び止める。
『あの、関君!』
『ん?』
『わかってると思うけど、もし誰かに会っても、今日、私と一緒だってことは…』
最後まで言わずとも、意図を汲みとった関君が、怪訝な顔を寄こす。
『別に、敢えて言う必要もないが、隠す必要もないだろ』
『いや、でも、ほら…まだ、日が浅いし…っていうか…いろいろ、噂になったら、関君だって、ね?困るでしょ』
我が社でも、社内恋愛をしている人はたくさんいるし、同じ部署や係内で付き合ったり別れたりなんてよく聞く話だけれど、相手がこと”関 諒太”となると、話が変わる。
恋人として、未だに自信の持てない自分が、いろいろ言われるのは目に見えてるし、関君だって、相手が私じゃ何を言われるか、わかったもんじゃない。
『俺は別に困らないが…』
小さく息を吐くと『倉沢が嫌なら、仕方ないな』と、呟く関君。
『ごめん』
『じゃ、行ってくる』
『うん』