Sweet break Ⅲ
今日は車だから、お互いお酒は飲まなかったけれど、初めて食べる異国の料理はどれも美味しく、食事も会話も自然と進み、時間の経過が早く感じてしまう。

お店のオーナーでもあるシゲさん自ら、”次は、お酒を飲みにおいで”と見送られ、店を出ると、時刻はまもなく、21時を過ぎようとしていた。

『関君ご馳走様、すっごく美味しかった』
『ああ…、ただほとんどシゲさんのサービスだったし、奢った気がしないけどな』
『オーナーさん、関君が来て、すごく嬉しそうだったね』
『まあ…な、自分もいつか来ようと思ってたんだが、さすがにこういう店に一人で来るには抵抗あったし…こっちこそ来ることができて、良かった』

関君だったら、一緒に連れてこようと思えば、男だって女だって、誰だって着いてくるだろうけど、今日私と…を選んでくれたことに、つい頬が緩んでしまう。

『もう、こんな時間か…』

海沿いの駐車場に止めた車の前で立ち止まり、自身の腕時計で時刻を確認してポツリとつぶやく関君。

お互い、明日が仕事だということを考えれば、もう帰った方が良いのかもしれないけれど、本音を言えば、もう少し一緒にいたいと思ってしまう。

”だって…”

今朝からずっと気になっていた懸案事項が、ポカリとまた浮上してくる。

”だって今日、私達まだ手も繋いでいない…”

そんな子供じみた想いが、早まりだす鼓動と共に、私を突き動かす。
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