Sweet break Ⅲ
『こっち見るなよ』
『…でも』
『心配するな、具合が悪いわけじゃない』

今度は運転席のシートにガッツリもたれ、私に触れた方の手をギュッと握りしめた拳を額に当て、大きく深呼吸をすると、何かを吹っ切るように身体を起こし、正面を向きエンジンをかける。

『帰るぞ』
『あ…うん?』
『家まで送る、いや、送らせろ…いいな』

今度は、有無を言わせないほどの強さで断言するように言われてしまう。

さっきまでの甘い雰囲気から一転、いつもの…いや、いつも以上に不機嫌になる関君に、訳がわからない。

『関君…なんか、怒ってる?』
『怒ってない』
『嘘、怒ってるじゃない』

何か機嫌を損ねることでもしたのだろうかと、食い下がる私に、今一度大きなな溜息を吐くと、『こんな感情、初めてでこっちがおかしくなりそうだ』と、苦しそうに独りごちる

『ごめん、何か気に障ったなら…』
『そうじゃない…勘違いするな』
『でも』
『いや、もし問題があるとすれば、その無自覚な言動や態度かもしれないな』
『何のこと?』
『分からないならいい…それより、早くシートベルトしろ』

言われて、慌ててシートベルトを着けると、それを待っていたように、車が動き出す。
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