Sweet break Ⅲ
Sweet break⑨
『おはよう!朱音!!』
『おは…ワッ、な、何?』
月曜日の朝。
社員通用口で紗季に会うなり、いきなり肩を抱き寄せられ、通路の端を歩きながら耳元でコソリと聞いてくる。
『…で、どうだったのよ?』
『どうって…』
『昨日のデートに決まってるでしょ?』
私よりいくらか背の高い紗季は、探るように私の顔を覗き込む。
『その顔、何かあったわね?』
『な、何も無いよ…』
『嘘…絶対何か進展あったでしょ?顔に書いてあるもの』
『えッ』
まるで見透かされているような尋問に、慌てて両手で頬を抑える。
顔に文字なんて書いてあるはずなどないのだけど、昨日からずっと緩みっぱなしの頬が、だらしなく表情に出ているのかもしれない。
『朱音…まさか、昨日ですべての工程を終わらせたとかじゃないでしょうね??』
『そんな訳ないでしょ!…言っておくけど、まだ手だって繋いでないし』
『は?…冗談でしょ』
『本当です』
紗季はよほど驚いたのか、歩みを辞めその場に立ち止まると、改めてもう一度問うてくる。
『だってデートだったんだよね?ずっと二人で一緒にいたんだよね?』
『うん』
『で、手も繋がなかったと…』
『そう』
事実を伝えているにも関わらず、どうにも納得できない様子の紗季。
『…にしては、朱音、やけにスッキリした顔してない?』
『そう?』