Sweet break Ⅲ
『おい』
私の肩に手を置いたまま訝しがる紗季の後ろから、話題の渦中である社内イチのクール男子。
『そこ、邪魔だ』
狭い通路で立ち止まって話込んでる私達を、枠なし眼鏡の奥から、非難するような眼差しを向ける、関君。
『あら、噂をすれば…』
『紗季!』
咄嗟に紗季を黙らせると、こちらを一瞥した関君と目が合い、ドキリとする。
『お、おはよう、関君』
『ああ』
いつも通りスマートなスーツ姿で、昨日の、休日仕様の関君と違って、今日はキチリと髪も整えられている。
『…お前ら、女同士で朝っぱらからくっついてるなよ、暑苦しい』
冷たく言い放ち、横を通り過ぎる。
『とか言って、関君、実は朱音にこんなことできちゃう私が、羨ましかったりして』
紗季が、ふざけて私の頭ごと抱き寄せ、関君を挑発する。
『ちょっと、紗季!』
紗季の言葉に、一瞬だけ立ち止まりこちらを見るも、心底呆れた顔で深いため息を吐き、そのまま何も言わずに2階に上がる階段に消えていく。