Sweet break Ⅲ

『相変わらずクールねぇ…』
『…ハハ…関君だからね』

関君の姿が完全に見えなくなると、紗季が私に問いかける。

『ま、でも、その感じじゃ、初デートは楽しかったみたいね』
『うん、まぁね』
『なら良かった…それに、あながち”何も無かった”わけじゃ無さそうだし…』

紗季が意味ありげに、にんまり微笑む。

『な、何よ?』
『…朱音、少し雰囲気、変わったわね』
『変わった?』
『うん、先週よりも、明らかに”女”の顔してる』
『嘘っ!』
『ったく、関君ってやっぱりタダ物じゃないかもね。手も繋がずに、朱音にこんな表情させるなんて、アイツいったいどんな手を使ったのか…』

両腕を組んで考え込む紗季の目に、現時刻を表示する腕時計が目に入り、始業時間が近づいていることに気が付くと、『いけない!今日朝一で会議だった』と慌てだす。

『朱音、詳細は近いうちに聞かせなさいよ』

そう言うや否や、先ほど関君が登っていった階段を駆け上がっていく。

紗季と違って、まだもう少し余裕のある私は、今さっき放たれた紗季の言葉で、急激に高まった鼓動と気恥ずかしさを抑えるため、しばし通路沿いの壁に寄りかかり、胸に手を当て自分を落ち着かせる。
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