Sweet break Ⅲ
Sweet break②
『嘘でしょ!?』
週末のデートまで後二日に迫った木曜日の夜。
仕事帰りに、同期の中で一番の仲の良い早坂紗季を捕まえて、落ち着いた和風居酒屋のカウンターで二人飲み。
『関君って、あの関君だよね?』
驚きを隠せない紗季の横で、黙ってうなずき、柚蜜サワーを口に運ぶ。
同期の中で唯一女性の営業職だけあって、ハキハキとした物言いと人当たりの良さが滲み出るキリリとした顔立ち。
敢えて本人には言っていないが、そのカッコ良さが、自分の周りにいる事務職の男性のみならず女性にもファンがいるのも頷ける。
『今日エイプリールフールじゃないよね?』
『もう4月半ばだよ』
『信じらんない…だってあの”関君”だよ?で、この朱音だよ?』
『ちょっと、どういう意味よ?』
軽く頬を膨らませて抗議すると、紗季は『冗談に決まってるでしょ』と豪快に笑う。
『でも良かったじゃない、朱音。好きだったんでしょう?関君のこと』
『好きって言うか…まぁ、ちょっと気になってたっていうか?』
『ふぅ~ん』
素直じゃ無い私の口から零れる返答に、紗季はニヤニヤ笑いながら、心の籠っていない相槌を打つ。